「土地が狭いから、家も狭くなってしまう」。そう思われがちですが、実は同じ30坪の家でも、広く感じる家と狭く感じる家がはっきり分かれます。差を生んでいるのは面積ではなく設計の工夫です。この記事では、間取りを広く見せる具体的な方法と、その工夫のうち「壁を抜けるかどうか」の判断がなぜ建築士でないと的確にできないのかを、設計から現場管理まで手がける1級建築士の立場から解説します。
そもそも、家の「広さ」は面積だけで決まらない
同じ30坪でも、広く感じる家と狭く感じる家があるのはなぜですか?
人が空間を「広い」と感じるかどうかは、床面積そのものより、視線がどこまで抜けるか、天井の高さ、廊下や壁でどれだけ空間が区切られているかに大きく左右されます。同じ30坪でも、廊下や壁で細かく区切られた家と、LDKを中心に視線が抜ける家とでは、体感の広さがまったく違います。
つまり、「うちの土地は狭いから」とあきらめる前に確認すべきは、その間取りが面積を最大限に活かす設計になっているかです。
広く見せる設計の工夫
30坪の間取りを広く見せるには、何を優先すればいいですか?
限られた面積を広く感じさせるためには、いくつかの定番の工夫があります。
- 廊下を減らす:廊下は「移動するためだけ」の面積です。廊下を削ってLDKや収納に回すだけで、体感の広さは大きく変わります
- 建具(ドア)を減らす、引き戸にする:開き戸は開閉のためのスペースが必要になりますが、引き戸や部分的に建具を省く設計にすると、空間がつながって見えます
- 天井を高くする、勾配天井にする:床面積が変わらなくても、縦方向の空間が増えることで開放感が生まれます
- 視線が抜ける窓の配置:奥の壁まで視線が届く位置に窓を配置すると、実際の面積以上に広く感じられます

これらの工夫に共通しているのは、「面積を増やす」のではなく「面積の使い方を変える」ということです。30坪という数字は変えられなくても、感じ方は変えられます。
▶ コンパクトな家について、YouTubeでも紹介しています。

「壁を抜く」判断は、なぜ建築士でないと的確にできないのか
部屋を広くするために壁を抜きたいのですが、どの壁でも抜けますか?
「リビングを広くしたいから、あの壁を抜きたい」という要望はよくあります。しかし、壁には建物を支えている「耐力壁」と、部屋を仕切っているだけの「間仕切り壁」があり、どちらかを見た目だけで判断することはできません。耐力壁を安易に抜いてしまうと、建物の耐震性能が大きく低下します。
[図3:耐力壁と間仕切り壁の違いをここに挿入]
どの壁が抜けて、どの壁が抜けないのかを構造計算に基づいて判断できるのは、構造を理解している建築士です。営業担当が間取りの見た目だけで「ここは抜けますよ」と答えてしまうケースもありますが、本来は構造の裏付けが必要な判断です。「広く見せたいので、この壁を抜けますか」と聞いたときに、その場で構造的な根拠まで説明できるかどうかは、会社を見極める分かりやすい基準になります。
知多地区・西三河地区で30坪の家を建てるときに
高浜市をはじめ西三河。知多の市街地エリアは、区画が限られた土地が多く、延床30坪前後の2階建てを選ぶ方が多いエリアです。平屋を選ぶには広い土地が必要になるため(詳しくは平屋の記事で解説しています)、限られた敷地で暮らしやすさを確保するには、この記事で紹介した「面積の使い方」の工夫がそのまま効いてきます。
契約前に、これを聞いてください
家の広さは面積だけで決まりません。廊下・建具・天井高・窓の配置という設計の工夫と、壁を抜けるかどうかを構造的に判断できるかどうかが、体感の広さを大きく左右します。
- 「この間取りで、廊下の面積はどれくらいですか」と聞く。廊下が多いと、その分LDKや収納が犠牲になっている
- 「この壁は抜けますか、抜けませんか」と聞く。その場で構造的な根拠まで説明できるかを見る
- 「天井を高くする、勾配天井にするといった提案はできますか」と聞く。面積を増やさずに広く見せる引き出しがあるかを確認する
まとめ
家の広さは、面積の大きさだけで決まるものではありません。廊下を減らす、建具を減らす、天井を高くする、視線が抜ける窓を配置するといった工夫で、同じ30坪でも体感の広さは大きく変わります。そして、広くするために壁を抜きたいときは、その判断が構造的な裏付けに基づいているかどうかが重要です。
限られた土地で、どこまで広く感じる家にできるか。土地が決まる前の段階からのご相談も承っています。
■ この記事を書いた人
前田 浩貴(まえだ ひろたか) 有限会社 IN THE HOME 代表 / 1級建築士・1級建築施工管理技士・2級土木施工管理技士
愛知県高浜市で注文住宅の設計・施工を手がける。営業任せにせず、建築士である自身がヒアリングから設計、現場管理までを一貫して担当。設計した人間がそのまま現場を見るため、図面通りに建てられることを何より大切にしている。規格住宅ではなく、一邸ごとに暮らしに合わせて一から設計するスタイル。YouTube「1級建築士 まえちゃんの家づくり教室」で家づくりの本音を発信中。
施工エリア:高浜市・碧南市・刈谷市・安城市・西尾市・知立市・岡崎市・常滑市・半田市・大府市・東浦町ほか西三河/知多エリア
家づくりの本音や現場の様子は、YouTube・Instagramでも発信しています。
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