「断熱等級を上げたので、夏も涼しいはずです」。実はこの説明には、見落とされがちなポイントがあります。
断熱等級の基準になっているUA値は、どちらかというと冬の暖かさに関わる指標で、夏の暑さは主に別の要素で決まります。この記事では、断熱等級と夏の暑さの関係、西三河の気候で本当に効く暑さ対策、そして2026年時点の断熱等級の基準まで、設計から現場管理まで手がける1級建築士の立場から解説します。
そもそも、断熱等級(UA値)は何を測っている指標か
断熱等級を上げれば、夏は涼しくなりますか?
断熱等級の基準になっているUA値は、建物の外皮(壁・屋根・窓など)からどれだけ熱が逃げにくいかを表す指標です。これは主に、冬に室内の暖かい空気がどれだけ外に逃げにくいかという話に直結します。
一方、夏の暑さは、熱が「逃げる」話ではなく、日射によって外から熱が「入ってくる」話が中心になります。
UA値が良い(数値が小さい)家でも、窓から大量の日射熱が入ってくれば、室内は暑くなります。断熱等級を上げることは大切ですが、それだけで夏の暑さがすべて解決するわけではありません。
夏の暑さを左右するのは「日射遮蔽」
夏の暑さ対策で、断熱以外に何が必要ですか?
夏の暑さ対策で重要なのは、日射をどう遮るか(日射遮蔽)です。具体的には次のような工夫があります。
- 庇(ひさし)・軒の出:夏は太陽の角度が高いため、庇や軒を適切に出すことで、窓からの日射をかなり遮ることができます。冬は太陽の角度が低いため、同じ庇でも日射を取り込めます
- 窓の方角と大きさ:特に西日が入る窓は、日射熱の影響を強く受けます。窓計画の段階で方角を考慮することが重要です
- 遮熱タイプのガラス(Low-Eガラス):ガラスの種類によって、日射熱をどれだけ通すかが変わります
- 外付けのブラインド・シェード:室内側のカーテンより、窓の外側で日射を遮るほうが効果が高くなります

庇は、夏の高い角度の日射は遮りながら、冬の低い角度の日射は室内に取り込めるという、季節による太陽高度の違いを利用した工夫です。断熱等級のように数値では表れにくい部分ですが、実際の暑さ・寒さの体感に大きく影響します。
▶ 断熱だけでは快適にならない!

知多・西三河で夏の暑さ対策を考えるときに
知立市・刈谷市・安城市をはじめ西三河の内陸エリアは、海からの風が届きにくく、夏場に熱がこもりやすい傾向があります。一方、知多半島側や伊勢湾に近いエリアは、海からの風を設計に活かしやすい立地です。同じ「西三河・知多」というくくりでも、内陸か沿岸かでも設計は変わることがあります。そして、庇や窓の方角といった日射遮蔽の工夫を意識的に取り入れることが、夏を快適に過ごすための近道になります。
断熱等級の基準は、今どこまで求められているか
今、断熱等級はどこまでが基準になっていますか?
2025年4月から、断熱等級4(UA値0.87以下)が新築住宅の法的な最低基準として義務化されました。それより上の等級の目安は次のとおりです(2026年時点の情報です)。
- 断熱等級4(UA値0.87以下):2025年4月以降の法的な最低基準
- 断熱等級5(UA値0.60以下):ZEH基準
- 断熱等級6(UA値0.46以下):HEAT20のG2グレード相当
- 断熱等級7(UA値0.26以下):HEAT20のG3グレード相当
なお、2030年には断熱等級5が新たな最低基準になる予定とされています。「等級4だから基準を満たしている」という説明だけでなく、その先を見据えた等級かどうかも、契約前に確認しておきたいポイントです。
将来的には断熱等級6が必要になってくると思います。ですから、私たちは標準で等級6以上にしています。
契約前に、これを聞いてください
断熱等級(UA値)は主に冬の暖かさに関わる指標で、夏の暑さは日射遮蔽の工夫が大きく左右します。断熱等級の数値だけでなく、庇や窓計画といった夏対策まで含めて提案してくれる会社かどうかを見極めてください。
- 「断熱等級を上げれば、夏も涼しくなりますか」と聞く。日射遮蔽についても説明できるかを見る
- 「庇や窓の方角は、夏の日射を考えて設計していますか」と聞く。数値だけでなく設計の工夫があるかを確認する
- 「今の断熱等級と、UA値の具体的な数値を教えてください」と聞く。等級だけでなく実際の数値まで即答できるかを見る
まとめ
断熱等級(UA値)は、主に冬の暖かさに関わる指標です。夏の暑さは、日射をどう遮るかという「日射遮蔽」の工夫が大きく左右します。庇や窓の方角、遮熱ガラスといった工夫を、断熱等級とあわせて提案してくれる会社かどうかを、契約前に確認してください。また、2025年4月からは断熱等級4が法的な最低基準となっており、2030年には等級5が最低基準になる予定です。
断熱と日射遮蔽の両面から、西三河の気候に合わせたご提案をしています。契約前の段階からご相談ください。
■ この記事を書いた人
前田 浩貴(まえだ ひろたか) 有限会社 IN THE HOME 代表 / 1級建築士・1級建築施工管理技士・2級土木施工管理技士
愛知県高浜市で注文住宅の設計・施工を手がける。営業任せにせず、建築士である自身がヒアリングから設計、現場管理までを一貫して担当。設計した人間がそのまま現場を見るため、図面通りに建てられることを何より大切にしている。規格住宅ではなく、一邸ごとに暮らしに合わせて一から設計するスタイル。YouTube「1級建築士 まえちゃんの家づくり教室」で家づくりの本音を発信中。
施工エリア:高浜市・碧南市・刈谷市・安城市・西尾市・知立市・岡崎市・常滑市・半田市・大府市・東浦町ほか西三河/知多エリア
家づくりの本音や現場の様子は、YouTube・Instagram・noteでも発信しています。
▶ YouTube「1級建築士 まえちゃんの家づくり教室」 https://www.youtube.com/@inthehome
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