「樹脂サッシとトリプルガラスにすれば、絶対にお得」と思っていませんか。実際に、複合サッシとペアガラスの窓と、樹脂サッシ・トリプルガラスにグレードアップした窓とで、電気代がどれだけ変わるのかを計算してみたところ、価格差を電気代だけで回収するには約200年かかるという結果になりました。この記事では、その計算の中身と、窓・サッシにお金をかけるならどこを優先すべきかを、設計から現場管理まで手がける1級建築士の立場から解説します。
[写真:樹脂サッシと複合サッシのサンプルを比較している様子]
そもそも、電気代の差はどうやって計算するのか
窓の性能による電気代の差は、どうやって計算するのですか?
「この窓なら電気代が安くなります」という説明は、感覚や過去の経験だけで語られていることが少なくありません。実際に電気代の差を出すには、次の4段階の計算が必要です。

[図1:電気代の差を計算する4つのステップ]
住宅会社によっては、UA値(断熱性能を示す数値)の計算まではしても、そこから実際の電気代への換算までは行わないこともあります。UA値が良い数字であることと、実際の電気代が安くなることは、似ているようで別の話です。
[YouTube動画:実際の計算の様子を解説した動画のリンクをここに挿入]
標準仕様とグレードアップ、電気代はどれだけ変わるか
樹脂サッシ+トリプルガラスにすると、電気代はどれくらい安くなりますか?
弊社の標準仕様は、複合サッシ(アルミ樹脂複合、LIXIL TW)+ペアガラス+アルゴンガス封入です。これを、樹脂サッシ(YKK APW430)+トリプルガラスにグレードアップした場合とで、実際に電気代を計算して比較しました。

[図2:窓をグレードアップした場合の電気代とコストの差]
33〜35坪程度の標準的な家で試算したところ、年間の電気代の差は約5,000円。一方、窓・サッシの価格差は約100万円になりました。電気代だけでこの差を回収しようとすると、単純計算で約200年かかります。もちろんこれは電気代だけで見た場合の話で、実際の住み心地(結露のしにくさ、部屋間の温度差など)まで含めた価値を否定するものではありません。ただ、「性能を上げれば上げるほど、電気代の面でも得をする」とは限らない、という現実は知っておいて損はありません。
比較されやすい他の樹脂サッシについて:弊社の標準である複合サッシ(LIXIL TW)は、樹脂サッシのYKK APW330と比較されることがあります。性能はそれほど変わらないにもかかわらず、価格は2〜3割ほど高くなる傾向があるため、弊社では標準仕様として複合サッシを採用しています。
もちろん、私たちも樹脂サッシの施工は可能です。窓が違うだけで施工は変わりません。
まずは、複合サッシで予算を確認してグレードアップしていく方が賢い家づくりだと思います。それは次の章でお話します。
では、なぜ樹脂サッシを進める会社が多いのか?
それは、同じ施工なのに単純に売り上げを2倍にできるからです。発注も工事も設計も特に変わりません。住宅会社としてはメリットがあります。そして、お客さんの受けが良いからです。「樹脂サッシが標準仕様です」と言われるとすごく得をしているような感じになります。営業トークとしても「樹脂サッシにすると結露無くなります」と言えます。実際は樹脂サッシにしたからと言って結露が無くなるわけじゃなく、換気、断熱、気密などが複合的に関係して結露になりますのでサッシだけでは解決しません。
このようにお客さんにとって耳障りの良い言葉で、住宅会社にもメリットがあれば無理に複合サッシにする必要は無いので、どの会社も樹脂にしているのだろうと思います。高浜市周辺の西三河、知多地区で樹脂サッシが必要かと言われるとそこまでは必要ないでしょう。予算に余裕があればやってもいいと思いますが、順番があります。
その順番について次にお話します。
グレードアップするなら、どの面を優先すべきか
予算に余裕がある場合、どの窓からグレードアップすべきですか?
窓の性能をすべて同じグレードにそろえる必要はありません。方角によって、日射の受け方がまったく違うからです。

[図3:方角ごとのグレードアップの優先順位]
南面は、日射そのものが暖かさを稼いでくれる方角なので、標準仕様のままでも十分なことが多くあります。
なぜなら、樹脂サッシは強度が低いので枠が太くなります。その分、ガラス面積が小さくなるので、南面からの日射取得は少なくなります。だから、枠が細い複合サッシで日射で室内が暖まりやすいペアガラスの方が快適に暮らせます。計算上でUA値の数値は下がりますが、家づくりは数値を競う事ではありません。
一方、東・西・北面は日射のメリットが少なく、熱の出入りの影響を受けやすい方角です。予算に余裕があってグレードアップを検討するなら、南面より先に、これらの面から優先するのが効率的です。
しかも、窓はそれほど大きくないので、樹脂サッシ+トリプルガラスにしても金額は抑えられます。方角ごとの役割を踏まえたうえで、性能のグレードをどこにかけるかを考えると、限られた予算をムダなく使えます。

会社選びの視点から
実際に相談ではさまざまな間取りを見ていると、西側に窓が多い家や、南に窓がない家は珍しくありません。窓の方角や性能を、なんとなくの感覚ではなく、計算や根拠に基づいて提案できるかどうかは、その会社の設計力を見極める分かりやすい基準になります。
樹脂サッシが標準なら南面も樹脂サッシのケースがとても多く、冬の日射取得による省エネ効果は少なくなっています。
あなたの家に合わせた、周りの環境に合わせた家づくりが快適さに直結していきますので、その説明をしてくれる会社と家づくりをした方がコスパよく良い家が手に入ると思います
契約前に、これを聞いてください
窓の性能を上げるほど電気代が安くなるとは限らず、電気代だけで価格差を回収するには長い年数がかかることもあります。グレードアップを検討するなら、日射のメリットが少ない東・西・北面から優先するのが効率的です。
- 「この窓の仕様で、電気代はどれくらい変わりますか」と聞く。UA値の説明だけで終わっていないかを確認する
- 「グレードアップするなら、どの面から優先すべきですか」と聞く。方角ごとの考え方を持っているかを見る
- 「標準仕様のサッシ・ガラスは、どこのメーカーの何という商品ですか」と聞く。具体的な商品名で答えられるかを確認する
まとめ
樹脂サッシやトリプルガラスは高性能ですが、電気代だけで価格差を回収しようとすると、想像以上に長い年数がかかることがあります。弊社の試算では、標準仕様からのグレードアップで年間の電気代は約5,000円安くなる一方、価格差は約100万円で、電気代だけで元を取るには約200年かかる計算になりました。大切なのは、性能を最大限にそろえることではなく、方角ごとの役割を踏まえて、どこにお金をかけるかを考えることです。
窓・サッシの選び方や、ご予算の振り分け方についてのご相談も承っています。
■ この記事を書いた人
前田 浩貴(まえだ ひろたか) 有限会社 IN THE HOME 代表 / 1級建築士・1級建築施工管理技士・2級土木施工管理技士
愛知県高浜市で注文住宅の設計・施工を手がける。営業任せにせず、建築士である自身がヒアリングから設計、現場管理までを一貫して担当。設計した人間がそのまま現場を見るため、図面通りに建てられることを何より大切にしている。 YouTube「1級建築士 まえちゃんの家づくり教室」で家づくりの本音を発信中。
施工エリア:高浜市・碧南市・刈谷市・安城市・西尾市・知立市・岡崎市・常滑市・半田市・大府市・東浦町ほか西三河/知多エリア
家づくりの本音や現場の様子は、YouTube・Instagram・noteでも発信しています。
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